先輩

新しい月。新しい出会いと新しい作業、人の名前と顔を覚えるのが苦手な私にとって、忙しくなりそうな月が始まった。



 先輩になったという事実が苦しい。



 私は何も出来ないのだから。ただ1年早く生まれただけ、ただ1年早くこの場に居ただけ。たったそれだけなのだから後輩が出来ても私は正直嬉しくない。



 幸いにも私はよく周りから好かれる。その「好かれる」という状況は社交辞令なのか、本心なのかわからず悩むこともあるが、今のところ周りから好かれていて損はしていない。だからそれで良かった。なのにまた気を遣わなければいけない相手がわりと急に増えた。

「こんにちは」

と挨拶をするとキラキラした笑顔、高い声で

「こんにちは!お名前聞いていいですか?」

と問われた。あー、眩しい、いまの私には目も開けられないくらいに眩しい。

問われた内容に返すとまたキラキラ笑顔で

「よろしくお願いします!」

と返された。繕ったような不格好な笑顔で返す。

「よろしくお願いします」



 愛想が悪くなかっただろうか、変なことは言ってないだろうか、あー、もう名前忘れたや、などと考えながら帰路に着いた。



 家に帰ってもなにもしたくなかった。久しぶりに身体が重たい、何もする気になれない。明日は午前休みだし、顔だけ洗って寝ることにした。朝シャンという選択肢は私の人生を少し楽にしてくれた入浴方法だ。風呂は夜!なんて法律がなくて良かった。ありがとう国。



 次の日しっかり朝からシャワーを浴びた。やっぱり朝から湯を浴びるのは気持ちがいい。心なしか心身共にスッキリした感じがする。



 午後からの予定に合わせ身支度をする。今日も死にたいと考えながら生きる。毎日そうだ。きっと明日も明後日も、私は死にたがって生きるのだ。いつか生きたいと願い、生きてみたい。



ここまで読んでくれた方、ありがとう。

では、また。